伊豆半島の西海岸一帯は、一般に「西伊豆」と呼ばれています。
美しい海岸線や夕日、堂ヶ島の洞窟、温泉などで知られる地域ですが、ここには少し変わったご当地グルメがあります。
その名も、「海賊焼」。
「海賊」という響きだけ聞くと、食事中に宝箱でも奪われそうな物騒さがあります。
しかし、実際に出てくるのは剣でも大砲でもありません。
イカ墨を使った、真っ黒な焼きそばです。
知らずに目の前へ置かれたら、料理なのか調理中の事件現場なのか、一瞬判断に迷うかもしれません。
どんな味なのか気になったため、西伊豆町まで食べに行ってみました。
西伊豆の海賊焼とは?
海賊焼は、西伊豆町のご当地グルメとして作られた焼きそばです。
最大の特徴は、イカ墨を練り込んだ真っ黒な麺。
そこへイカなどの海産物や野菜を加えて炒め、岩のりを載せて仕上げます。
見た目は豪快ですが、味付けは比較的あっさり。
一般的なソース焼きそばとは違い、海産物や磯の香りを楽しむ料理です。
店舗によって使う具材や盛り付けには違いがありますが、イカ墨入りの黒い麺を使うことが基本。
西伊豆町内の複数の飲食店で提供され、ご当地グルメとして定着しました。
同じ麺を使っていても、それぞれの店が独自の具材や味付けを加えています。
つまり、海賊船は同じでも、船長によって航路が違うようなものです。
海賊焼で知られる「喜久屋」へ
今回訪れたのは、海賊焼を提供する店として知られる「喜久屋」さん。
国道136号沿いにあり、西伊豆ドライブの途中にも立ち寄りやすい食事処です。
【喜久屋】静岡県賀茂郡西伊豆町仁科803-2
電車の駅から歩いて行ける場所ではないため、車や路線バスでの訪問が基本となります。
路線バスなら「大浜」バス停の近く。
車の場合は、堂ヶ島から国道136号を南へ走れば数分ほどです。
西伊豆は海岸線の景色が美しい反面、道路はカーブが多め。
海賊焼のことばかり考えず、安全運転で向かいましょう。
地元の食堂らしい喜久屋の外観
こちらが喜久屋です。
外観は、いかにも地元で長く営業してきた食堂といった雰囲気。
観光客向けに派手な装飾を施した店ではありません。
知らずに通りかかれば、ごく普通のそば・うどん店に見えるでしょう。
しかし、この落ち着いた店内から、後ほど真っ黒な麺が運ばれてきます。
外観と料理の色には、なかなかの温度差があります。
入店直後に「B級グルメ?」と聞かれる
店へ入ると、女将さんと思われる方から、
「B級グルメ?」
と、突然聞かれました。
まだ何も注文していませんが、目的はすでに見抜かれています。
遠方から訪れる客の多くが、海賊焼を注文するのでしょう。
もしかすると、店へ入ったときの観光客らしい表情だけで分かるのかもしれません。
こちらとしても説明の手間が省けました。
入店して数秒で、店側と目的を共有できる。
非常に効率のよい接客です。
もちろん、今回のお目当ては海賊焼。
迷わず注文しました。
注文していない小鉢が次々に登場
海賊焼を待っていると、注文していない料理が運ばれてきました。
オニオンスライス、ポテトサラダ、ひじき煮です。
お通しでしょうか。
それとも店からのサービスだったのでしょうか。
いずれにしても、これはうれしいですね。
どれも家庭料理らしい素朴な味。
豪華な創作料理ではありませんが、こういう小鉢は妙に落ち着きます。
海賊を待っていたはずなのに、最初に現れたのはポテトサラダ。
かなり平和な幕開けです。
真っ黒な「海賊焼」が登場
そして、いよいよ海賊焼が運ばれてきました。
黒い。
想像していた以上に、しっかり黒いです。
普通の焼きそばは茶色。
塩焼きそばなら白っぽい色。
しかし、海賊焼は麺全体が漆黒です。
皿の上に、夜の海をそのまま載せたような見た目。
ここまで黒いと、紅しょうがを1本載せるだけでも抜群に目立ちそうです。
岩のりから磯の香りが広がる
麺の上には、岩のりがたっぷり載っています。
料理が目の前へ置かれた瞬間、磯の香りがふわっと広がりました。
見た目だけでなく、香りまで海を強く主張しています。
岩のりを麺へ絡めて食べると、香りはさらに濃厚。
イカ墨の麺と海産物、岩のりが組み合わさり、一般的な焼きそばとはまったく違う印象です。
海賊焼という名前だけ見ると肉を豪快に焼いた料理にも思えますが、実際はかなり磯寄り。
海賊より、漁師の食卓に近い雰囲気です。
麺の黒さはイカ墨
麺を持ち上げてみます。
この黒い色の正体は、もちろんイカ墨。
ただし、パスタのように調理時にイカ墨ソースを絡めているわけではありません。
イカ墨を麺そのものへ練り込んであります。
そのため、表面がベタベタした黒いソースで覆われている感じではありません。
箸で持っても、見た目ほど扱いにくくはないです。
食べても口がお歯黒になりにくい
イカ墨料理で気になるのが、食後の口元。
イカ墨パスタを食べると、歯や唇が黒くなり、食後の笑顔が少し不気味になることがあります。
しかし、海賊焼はイカ墨が麺へ練り込まれています。
黒いソースが大量に付着する料理ではないため、一般的なイカ墨料理ほど口が真っ黒になる心配は少なそうです。
とはいえ、岩のりが歯に付く可能性はあります。
食後の記念撮影では、念のため鏡を確認しましょう。
具材にもイカがたっぷり
麺だけでなく、具材にもイカが使われています。
イカ墨入りの麺に、イカの身。
料理全体でイカを余すことなく活用しています。
イカの身は弾力があり、噛むと旨味が広がります。
黒い麺だけでは食感が単調になりそうですが、イカがよいアクセントになっていました。
海賊焼という勇ましい名前ですが、実際に最も働いているのはイカです。
カイワレとタケノコらしき具材も入っている
海産物だけでなく、カイワレやタケノコらしき具材も入っていました。
焼きそばにカイワレは、少し珍しい組み合わせ。
タケノコも一般的な焼きそばでは、あまり見かけません。
しかし、どちらもシャキシャキとした歯応えがあり、柔らかい麺やイカとの食感の違いを楽しめます。
真っ黒な見た目に気を取られますが、食べてみると意外に具材のバランスが考えられています。
黒い麺の中からタケノコが現れると、海底で宝物を発見したような気分になります。
海賊焼は塩焼きそばに近い?
味の分類としては、ソース焼きそばより塩焼きそばに近い印象です。
濃厚なソース味で押し切るタイプではありません。
イカや岩のりの風味を生かした、比較的あっさりした味付け。
海産物の塩気と旨味が中心で、後味も重くありません。
見た目は非常に濃そうですが、味まで真っ黒なわけではないのです。
人も料理も、外見だけで判断してはいけません。
海賊の姿をしていても、中身は意外と塩対応ならぬ塩味です。
岩のりをよく混ぜて食べる
運ばれてきた状態では、岩のりが麺の上へまとまって載っています。
最初に少しずつ崩し、全体へ混ぜながら食べるのがおすすめです。
岩のりを一度に全部食べると、後半の麺が少し寂しくなります。
反対に最後まで残しすぎると、終盤は岩のりだけを食べることになります。
麺とイカ、野菜、岩のりをバランスよく箸へ取るのが理想。
焼きそばを食べるだけなのに、少し航海計画が必要です。
ソース焼きそばとは別の料理
海賊焼を「黒い焼きそば」として想像すると、味の違いに驚くかもしれません。
富士宮や横手などのご当地焼きそばは、ソースの個性が味の中心になることが多いです。
一方、海賊焼はイカ墨麺と岩のり、海産物の香りが主役。
同じ焼きそばの仲間ではありますが、一般的なソース焼きそばとは別の料理として考えたほうがよいでしょう。
濃いソース味を期待して注文すると、少しおとなしく感じる可能性があります。
磯の香りやイカの旨味を楽しみたい方に向いたご当地麺です。
「ブラック焼きそば」のほうが伝わりやすい?
料理を知らない方に「海賊焼」と伝えても、どんな食べ物かはなかなか想像できません。
肉を焼くのか。
魚介類の網焼きなのか。
豪快な海鮮バーベキューなのか。
名前だけでは、焼きそばへたどり着くのは難しいでしょう。
「イカ墨を使ったブラック焼きそば」
と説明すれば、見た目はかなり想像しやすくなります。
ただし、それでは西伊豆のご当地グルメとしての物語や勢いが弱くなります。
「ブラック焼きそば」より「海賊焼」。
何を食べるのか分からなくても、後者のほうが注文してみたくなる名前です。
なぜ「海賊焼」という名前なのか
元の記事では、
「昔、西伊豆一帯が海賊に苦しめられた歴史が名前の由来」
と紹介していました。
しかし、改めて2026年に観光情報や店舗情報を調べたところ、この由来を裏付ける公的な資料は確認できませんでした。
現在確認できる情報では、海賊焼は西伊豆の町おこしから生まれたご当地グルメ。
イカ墨を練り込んだ黒い麺、海産物、岩のりを使い、西伊豆の海を印象づける料理として提供されています。
そのため、名前は黒い麺や海の幸、海賊を連想させる豪快なイメージから付けられたものと考えるのが自然です。
少なくとも、昔の海賊がこの焼きそばを食べていたという記録は見つかりません。
もし食べていたとしても、航海中に岩のりを歯へ付けていた可能性はあります。
西伊豆の町おこしグルメとして誕生
海賊焼は、西伊豆町を訪れた観光客に地元らしい料理を楽しんでもらうために作られたご当地グルメです。
麺には、西伊豆町の製麺会社が開発したイカ墨入りの黒い麺を使用。
共通の麺を使いながら、提供する店が具材や盛り付けを工夫しています。
そのため、店を変えて食べ比べるのも楽しみ方の1つ。
喜久屋では、イカや岩のり、野菜を合わせた磯の香り豊かな海賊焼を味わえました。
海賊焼は表彰実績のあるご当地商品
海賊焼は、単に見た目が珍しいだけの料理ではありません。
地域の素材や特徴を生かした商品として評価され、特産品のコンテストや静岡県の新商品選定で表彰された実績があります。
真っ黒な見た目で注目を集めつつ、地域の飲食店や製麺会社が連携して西伊豆をPRする。
ご当地グルメとして、きちんと町おこしの役割も果たしています。
海賊という名前ですが、地域経済に対しては略奪するどころか、しっかり貢献しているようです。
喜久屋では西伊豆しおかつおうどんも人気
喜久屋では、海賊焼以外にも西伊豆らしい麺料理を提供しています。
その1つが「西伊豆しおかつおうどん」。
西伊豆町の伝統食である潮かつおを使ったうどんです。
潮かつおは、カツオを丸ごと塩漬けにして乾燥させた保存食。
かつては正月の縁起物として神棚へ供える風習もあり、西伊豆町田子地区の伝統として受け継がれています。
海賊焼と並び、西伊豆の食文化を手軽に楽しめるメニューです。
胃袋に余裕があれば両方食べ比べたいところですが、麺料理を連続で注文すると、帰りの運転席でベルトが少し厳しくなります。
海藻入りの「磯打麺」もある
喜久屋では、海藻を練り込んだ「磯打麺」も提供されています。
青のりやワカメを使った麺で、磯の風味を楽しめる料理です。
イカ墨入りの黒い海賊焼。
海藻入りの磯打麺。
潮かつおを使ったうどん。
麺類だけでも、店内の海産物濃度はかなり高めです。
海を眺めたあとに食べれば、西伊豆旅行らしさをより強く感じられるでしょう。
2026年も喜久屋は営業中
2026年4月に喜久屋を訪れた利用者の記録があり、現在も同じ住所で営業していることを確認できました。
海賊焼についても、現在の店舗紹介で名物料理として掲載されています。
ただし、営業時間については情報サイトごとに違いがあります。
比較的新しい店舗情報では、次の時間が掲載されています。
昼:11:30~14:30
夜:17:30~19:30
一方、過去の紹介では10:00~20:00とされていた時期もあります。
営業時間が変更された可能性があるため、過去の記事だけを頼りに訪れるのはおすすめできません。
特に夜は早めに閉店する可能性があります。
夕日をゆっくり眺めすぎて、食堂の明かりまで沈まないよう注意しましょう。
定休日と営業日は電話確認がおすすめ
2026年時点で、喜久屋の公式サイトや公式SNSは確認できませんでした。
定休日についても、店舗情報によって「無休」や未記載など差があります。
臨時休業や営業時間変更の可能性もあるため、遠方から訪れる場合は電話確認が確実です。
電話番号:0558-52-0514
海賊焼を食べるために西伊豆まで走り、店の前で定休日を知る。
それでは、宝島へ到着したのに宝箱が空だった海賊と同じ気分になります。
海賊焼の現在価格は店頭で確認を
過去の店舗紹介では、海賊焼は650円と案内されていました。
しかし、この価格は現在のものとは限りません。
原材料費や光熱費などの上昇により、飲食店の価格は変更されている可能性があります。
2026年時点の正確な価格を、信頼できる最新の公式情報では確認できませんでした。
この記事では古い価格を現在価格として断定せず、訪問時の店頭メニューを優先します。
注文前に価格を確認してください。
海賊に財布を奪われることはありませんが、昔の価格だと思い込んでいると少し驚くかもしれません。
予約は受け付けていない可能性あり
現在の店舗情報では、喜久屋は予約不可と案内されています。
基本的には、店へ到着した順に利用する食堂と考えたほうがよいでしょう。
席数には限りがあるため、連休や昼食時には待つ可能性があります。
確実に食べたい場合は、開店時間に近いタイミングで訪れるのがおすすめです。
大人数で訪れる場合は、予約の可否や席の状況を電話で確認しておくと安心です。
駐車場について
過去の店舗情報では、喜久屋には数台分の駐車場があると案内されています。
ただし、2026年時点の正確な台数は公式情報で確認できませんでした。
店舗前や周辺の案内に従って駐車してください。
国道沿いのため、路上駐車は危険です。
黒い麺を食べるために、交通ルールまで黒くする必要はありません。
支払い方法
比較的新しい店舗情報では、クレジットカードと電子マネーは利用不可、QRコード決済には対応していると案内されています。
ただし、対応するサービスや決済方法は変更される可能性があります。
現金を用意しておくと安心です。
西伊豆では観光施設や飲食店を何軒か回ることも多いため、少額の現金を持っておくと便利でしょう。
2026年版・喜久屋の店舗情報
店舗名:喜久屋
住所:静岡県賀茂郡西伊豆町仁科803-2
電話番号:0558-52-0514
アクセス:東海バス「大浜」バス停付近、国道136号沿い
営業時間の目安:11:30~14:30、17:30~19:30
定休日:最新情報を電話で要確認
予約:店舗情報では予約不可
駐車場:ありとされるが、現在の台数は要確認
支払い:現金を推奨。QRコード決済対応の掲載情報あり
主なメニュー:海賊焼、西伊豆しおかつおうどん、磯打麺、そば、うどん、定食など
海賊焼の価格:現在価格は店頭で要確認
営業時間、定休日、価格、支払い方法、メニュー内容は変更される場合があります。
訪問前に電話で最新情報をご確認ください。
海賊焼はどんな人におすすめ?
西伊豆の海賊焼は、次のような方におすすめです。
・西伊豆らしいご当地グルメを食べたい方
・イカ墨料理が好きな方
・ソース味以外の焼きそばを試したい方
・岩のりや磯の香りが好きな方
・見た目にインパクトのある料理を探している方
濃いソース焼きそばや、甘辛い味を期待する方には、少しあっさり感じるかもしれません。
一方、イカや岩のりなど海産物の風味を楽しみたい方には向いています。
イカ墨入りですが、麺へ練り込まれているため、イカ墨パスタより食べやすいのも特徴です。
まとめ|見た目は黒いが味は磯香るあっさり系
静岡県西伊豆町の喜久屋で、名物の「海賊焼」を食べました。
イカ墨を練り込んだ真っ黒な麺へ、イカや野菜を合わせ、岩のりをたっぷり載せたご当地焼きそばです。
見た目はかなり濃厚そうですが、味付けは意外にもあっさり。
ソースの濃さで食べる焼きそばではなく、イカや岩のりの磯の香りを楽しむ料理でした。
麺にイカ墨が練り込まれているため、食後に口が真っ黒になりにくいのもうれしいところ。
ただし、岩のりは歯に付く可能性があります。
海賊焼という名前の由来について、昔の海賊と結び付ける説を裏付ける資料は確認できませんでした。
現在確認できる範囲では、西伊豆の海産物と黒いイカ墨麺を生かした、町おこしのご当地グルメとして誕生した料理です。
名前だけでは内容を想像しにくい分、実物を見たときの驚きは十分。
西伊豆を訪れたら、夕日や海岸の絶景だけでなく、皿の上に広がる真っ黒な海も体験してみてください。
宝箱は出てきませんが、黒い麺の中からイカやタケノコを見つける楽しみはあります。













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