歴史の宿金具屋(かなぐや)。
長野県の渋温泉にある温泉旅館です。
温泉好き、または歴史的建造物に詳しい方なら、一度はその名を聞いたことがあるかもしれませんね。
宿屋なのに「金具屋」なんて変わった名前だと思いませんか。
これは、前身が「鍛冶屋」であったためです。
外観は昭和初期を感じさせる昔ながらの建物。
中に入ると、まるで当時にタイムスリップしたんじゃないか?と思えるほどの不思議な感覚に陥るといわれます。
金具屋を構成している建物の一つ「斉月楼」と80年前からほぼ変わっていない「大広間」は、2003年に国の登録有形文化財に認定されましたが、当時の姿のまま営業し続けているという点も注目されている温泉宿です。
若い人や海外からの観光客も非常に多いですが、その理由の一つが「千と千尋の神隠し」のモデルになっていると言われているから。
私にとっても、いつかは絶対に行ってみたい温泉宿でしたが、やっと念願叶って行くことができました。
ということで、歴史の宿「金具屋」の魅力を存分にお伝えします。
尚、写真撮影にはスマホとちょっといいデジカメを使用しました。
オレンジ色っぽい画像がデジカメで撮ったままの写真、それ以外の画像はスマホで撮ったものを明るく加工したものです。
金具屋のある渋温泉は、湯けむり漂うノスタルジックな温泉街。
足湯や9箇所もある外湯、お土産屋、射的屋さんなどがあり、コンパクトながらも観光客を惹き付ける要素がぎっしりと詰まっています。
渋温泉街に入りました。
源泉が数多く存在する渋温泉。
地面を掘れば、すぐお湯が出てしまうといわれています。
そこかしこで湯気もうもうと湧き出ています。
それでは、金具屋の魅力を全力でお伝えします!
目次
金具屋の建物は近代的な温泉宿とは一線を画す佇まい
金具屋さんに到着しました。
ワクワクしますね。
【渋温泉 金具屋】長野県下高井郡山ノ内町平穏2202
・上信越自動車道信州中野ICから約20分
駐車場は金具屋専用のものがありますが、徒歩で5分ほどの離れた場所にあります。
駐車場に行く前に直接金具屋さんに寄ってみると、「車はここで結構です」と、係りの方が駐車場まで停めに行ってくれました。
では、憧れの金具屋さんにお邪魔します。
ここは帳場ですね。
ロビー、それから待合所(休憩所)です。
フリーWi-Fiがあります。
しかし、Wi-Fiは基本的にはロビー付近でしか使えません。
私が泊まった305の杏林では完全に電波が届きませんでした。
では、館内を散策してみます。
金具屋の六代目が実際に住んでいた部屋「杏林」
金具屋の部屋は全部で29室あり、当時の職人がひとつひとつすべて異なる造りに仕上げたそうです。
造られた時代も様々で、どの部屋も個性的。明治~昭和の流行が色濃く反映されています。
それらの中で、私の妻が特に気に入った「杏林」の部屋を予約することができました。
この「杏林」は、金具屋の六代目館主が非常に好んでいて、晩年には実際に滞在していた部屋だそうです。
杏林へは、このレトロ調のタイル敷の階段を上って行きます。
蔵のような内装。味がある。
ここが「杏林」(あんずの間)
お部屋に入ります。
六代目が好んだステンドグラスのあるソファー席。
ソファーに座り、窓の外を眺める。
杏林にはお風呂が付いています。
気持ちの良い木枠のお風呂です。
お湯の蛇口から出る温泉はかなり熱いです。
一緒に水も出して温度を下げたいところですが、そうすると温泉が薄まってしまうので、熱い温泉だけで湯を張り、ある程度時間をおいて冷ましてから浸かることをおすすめします。
シャワーはないけど、張ったお湯から手桶で汲んで頭や体にかければ問題ありません。
部屋にあったアメニティは、浴衣・バスタオル・ハンドタオル・ボディ用スポンジ・歯ブラシセット・T字髭剃り・足袋。
先ほど述べたように、金具屋のWi-Fi電波は部屋には届きません。
有線接続のLANもなく、私が持参したポータブルWi-Fi(WiMAX2+)も電波が届きませんでした。
スマホの電波(NTTドコモ)は届きます。
「文化財巡り」で金具屋の歴史を知る
毎日17:30から、「金具屋文化財巡り」というツアーが実施されます。
金具屋の宿泊者のみ参加可能(無料)です。
せっかくなので参加してみることにしました。
ということで、「文化財巡り」が行われる大広間に行きます。
ここが大広間。8階にある飛天の間です。
この大広間で金具屋の建物についての歴史を聞きます。
大広間での説明で重要ポイントの天井。
そして下の階に移動します。
改築、増築を繰り返したため、本来は段差ができる部分を不自然さがないようにスロープでつないである部分などは見事な職人芸ですね。
各階の重要ポイントごとに説明を聞きつつ1階まで降りるという流れで、時間にして35分ほどでした。
金具屋の温泉はすごい!
金具屋の温泉はすごいです。
何がすごいかというと、その前に私が入った温泉をご紹介します。
鎌倉風呂
ヒョウタン形が特徴の浴槽です。
シャワーは1か所だけあります。
お湯は鉄のにおいを強く感じました。若干濁っています。
この鎌倉風呂の泉質は弱酸性です。
龍瑞露天風呂
他のお風呂は男女入れ替えですが、この龍瑞露天風呂だけは男女別にあるので、時間を気にせず入ることができます。
露天風呂は気持ちが良い。
この龍瑞露天風呂は、金具屋では唯一硫黄分を含む「弱アルカリ性」。
龍瑞露天風呂もシャワーは1か所。
斉月の湯
金具屋では5つの貸し切り風呂があり、そのうちの一つ「斉月の湯」に入ることができました。
内側から鍵をかけて使用します。
船の形をした浴槽です。
壁には富士山と松の木が。
貸し切り風呂としては一番大きな浴槽の斉月の湯に、一人でのんびり浸かれる幸せ。
シャワーは2か所ありました。
ちなみに、斉月の湯の源泉は龍瑞露天風呂と同じです。
浪漫風呂
この浪漫風呂には他のお客さんも入浴中だったので撮影ができませんでした。
公式サイトの写真を載せておきます。
ローマをイメージさせる噴水とステンドグラス。
浪漫風呂は金具屋では最古の源泉で、地下3メートルから湧き出しています。
鉄分を多く含むので黄色く濁っているという話ですが、実際には光の影響か白っぽく見えました。
浪漫風呂の泉質は「中性」です。
以上、私が入った4つの温泉を紹介しました。
結局、金具屋の温泉の何がすごいのか?というと、泉質が「弱酸性」「中性」「弱アルカリ性」と揃っているという点です。
ちなみに、「酸性」の対極が「アルカリ性」で、両者の中間が「中性」といわれています。
異なる源泉が複数ある温泉郷というのはよくありますが、泉質はどれも似ているケースがほとんどだと思います。
それが、一つの宿の中でこんなにも違う泉質の温泉が楽しめるというのは珍しいのではないでしょうか。
夕食の量がすごく多い
夕食は座敷の個室を使うことができました。
こちらが夕食のお品書きです。
品目がかなり多いです。
では、一気にご紹介します。
長野は馬刺しも名物なので、何らかの形で馬刺しが出ることを期待していたのですが・・・今回はナシでした。
千と千尋の神隠しファンの聖地?
夕食のあとは、渋温泉街を散策してみることにしました。
飲める温泉がありました。
飲んでみました。
鉄の味を強く感じました。
夜の金具屋看板。
外観はこんな感じ。
そして、これが「千と千尋の神隠し」の湯屋のモデルになったと噂されている景色です。
実は、宮崎駿監督もスタジオジブリも、金具屋が千と千尋のモデルになったとは発表していません。
千と千尋のモデルになったと言われている場所は、他にも四万温泉や台湾などいろいろあります。
果たして、宮崎監督はモデルと言われている場所に実際に行き、それらを作品に登場させたのでしょうか。
この金具屋にも泊まったことがあり、この景色を作品作りのヒントにしたのでしょうか?
しかし、もしそうであれば話題になっているはずですから、たぶんそれはないのでしょう。
おそらく、たまたま何かで知って「お、これは良い」と思った各所の良いとこ取りをして作品に登場させたか、あるいはモデルになったと言われている場所がたまたま宮崎監督の世界観に似ていたか、そのどちらかではないかと思います。
その中にあっても、金具屋は「千と千尋」ファンが多く訪れています。
事実、私が金具屋を訪れた日、温泉街と金具屋内部でカオナシのコスプレをしている二人組を見かけました。
写真を撮らせてもらえば良かったと悔やんでいます(笑
朝食は元気が出る「麦とろ御膳」
翌日の朝食も、夕食と同じ個室でいただきました。
麦飯+とろろ御膳です。
金具屋さんでは20年以上前からこの麦とろ御膳を朝食に出しているそうです。
卵黄をご飯にかけて玉子かけご飯にするもよし、とろろに入れてご飯にかけるもよし。
豚の味噌焼きは私好みの味でした。
温泉効果でしょうか。朝食時はいつも以上にお腹が空き、ご飯をおかわりしてしまいました。
以上、歴史の宿「金具屋」さんをご紹介しました。
渋温泉を訪れたのは今回が初めてですが、第一印象は「昔懐かしい景色が広がる素朴な温泉街」。
それが滞在しているうちに、単に寂れている温泉街ではないと感じるようになっていきました。
客層は、若いカップルや女性グループ、外国人観光客が多く、それぞれが浴衣姿で昔ながらの温泉街を楽しんでいるのがとても新鮮に感じられました。
そして、渋温泉は何といっても温泉が素晴らしいです。
私が今回味わった温泉は金具屋さん内の温泉だけですが、感動すら覚えました。
鎌倉風呂、浪漫風呂、龍瑞露天風呂、斉月の湯、部屋についているお風呂と合計5回入りましたが、金具屋さんの温泉の素晴らしさを実感しただけに、渋温泉の他の温泉も入りたくなりました。
この記事が、金具屋さんへの宿泊、または渋温泉旅行を検討している方の参考になりますように。
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