伊豆大島へ行ったら、ぜひ飲んでみたいと思っていた物があります。
それが、島の名前を冠した大島牛乳です。
その名のとおり、伊豆大島で搾られた生乳を使い、島内の工場で製造されているご当地牛乳。
単なる観光客向けの商品ではなく、島内の学校給食にも採用され、地元の方々に長く親しまれています。
ところが、この大島牛乳。
現在まで順風満帆に作り続けられてきたわけではありません。
一度は工場が閉鎖され、店頭から完全に姿を消したことがあります。
そこから島の酪農を守ろうと立ち上がった人々の手によって、見事に復活を果たした牛乳なのです。
今回は、そんな大島牛乳の歴史を振り返りながら、実際に飲んでみた感想をご紹介します。
伊豆大島は「ホルスタイン島」と呼ばれていた
現在の伊豆大島と聞いて、多くの方が思い浮かべるのは三原山、裏砂漠、椿、温泉、明日葉などでしょう。
しかし、かつての伊豆大島は全国的に知られた酪農の島でした。
明治30年頃、伊豆大島へ純粋なホルスタイン種が導入されました。
大正時代の1913年には約1,000頭、最盛期の昭和元年頃には1,200頭を超える乳牛が飼育され、伊豆大島は「ホルスタイン島」と呼ばれるほど酪農が盛んだったそうです。
なぜ火山島の伊豆大島で酪農が発展したのでしょうか。
理由の1つとされているのが、比較的温暖な気候です。
さらに、島には明日葉、スゲ、ハチジョウススキなど、牛が食べる青草が年間を通して育ちやすい環境がありました。
島内で育てた乳牛から生乳を搾り、その牛乳を島の工場で製品にする。
伊豆大島には、牛を育てる環境と牛乳を作る仕組みがそろっていたのですね。
大島牛乳と大島バターが島の特産品に
島で搾られた生乳から作られたのが、大島牛乳と大島バターです。
大島牛乳は島民の日常的な飲み物として親しまれ、大島バターは希少な特産品として人気を集めました。
さらに、大島牛乳は島内の菓子や料理にも使用されています。
伊豆大島土産として知られる牛乳煎餅。
大島牛乳を使ったアイスクリーム、パン、プリン、カフェラテなど。
牛乳そのものだけでなく、島のさまざまな味を支える存在になっていったのです。
2007年に大島牛乳が店頭から消える
長く愛されてきた大島牛乳ですが、2000年代に大きな危機を迎えます。
牛乳の消費量減少や、大手乳業メーカーとの価格競争などによって経営環境が悪化。
そして2007年2月、牛乳やバターを製造・販売していた会社が工場を閉鎖しました。
工場が止まれば、島で生乳を搾っても牛乳として販売できません。
こうして大島牛乳と大島バターは、一度店頭から姿を消してしまったのです。
島民にとって、子どもの頃から飲んできた牛乳が突然なくなる。
観光土産が1つ減ったという程度の話ではなく、島の食文化と酪農そのものが失われかねない出来事でした。
島の有志が立ち上がり大島牛乳が復活
しかし、ここで大島牛乳の歴史は終わりませんでした。
「このまま伊豆大島の酪農を終わらせてはいけない」
そんな思いを持った島の有志が集まり、大島牛乳の復活を目指して動き始めます。
2007年に有志6人によって株式会社大島牛乳が設立され、翌2008年には大島牛乳や大島バターが再び店頭へ並ぶまでになりました。
一度失われた島の味が、島民の熱意によって復活したのです。
ご当地牛乳にはさまざまな商品がありますが、ここまで劇的な復活物語を持つ牛乳は珍しいのではないでしょうか。
牛乳パックの向こう側に、島の酪農を守った人々の努力が詰まっています。
牧場から工場へパイプラインで生乳を運ぶ
大島牛乳の牧場と工場は、大島空港に近い場所にあります。
特徴的なのは、牧場と牛乳工場が隣接していること。
搾った生乳は、牧場から工場へパイプラインで直接送られます。
一般的な牛乳では、複数の牧場から集めた生乳をタンクローリーで工場へ運ぶことが少なくありません。
大島牛乳は、搾乳した場所のすぐそばで製造工程へ移せるため、新鮮な生乳を素早く処理できるのです。
大島牛乳は75℃で20分殺菌
大島牛乳は、75℃で20分間加熱する高温保持殺菌法を採用しています。
一般的な市販牛乳で多く採用される超高温瞬間殺菌と比べ、時間をかけて加熱する方法です。
この製法により、牛乳本来の風味を残した味わいに仕上げているそうです。
一方で、消費期限は一般的な牛乳より短め。
大量生産や長距離輸送より、島内で新鮮なうちに飲むことを重視した牛乳といえるでしょう。
これが復活した大島牛乳
それでは、実際の商品をご覧ください。

パッケージには、伊豆大島を象徴する椿と三原山が描かれています。
牛乳パックだけを見ても、ひと目で「伊豆大島の商品」と分かるデザインですね。
旅行先でご当地牛乳を見つけると、なぜか飲みたくなります。
全国どこでも同じ味の商品を買える便利な時代だからこそ、その土地でしか出会えない物に引かれるのでしょう。
店頭で見つけ、迷わず購入しました。
大島牛乳を実際に飲んでみた
購入した牛乳は、宿泊先のホテルで飲むことにしました。
ひと口飲んでみると……。
うん、甘くておいしい!
口当たりは濃厚ですが、後味は比較的すっきりしています。
牛乳特有の重さやクセが強いというより、自然な甘みが感じられる味です。
普段飲んでいる牛乳より、おいしく感じました。
旅先で飲んでいるという状況や、復活の歴史を知った直後なので、多少の思い込みは含まれているかもしれません(笑)
しかし、その土地で作られた物を現地で味わうと、おいしさが何割か増すのは間違いありません。
大島牛乳で即席カフェオレを作ってみた
ところで、レンタカーの中で飲もうと思って買った缶コーヒーがありました。
ところが、レンタカーにはドリンクホルダーが見当たりません。
運転中に飲む機会を失い、ずっと持ち歩くことになりました。
そこで、大島牛乳と缶コーヒーを混ぜ、即席カフェオレを作ってみます。

高級なコーヒー豆を使ったわけでも、バリスタが絶妙な割合で作ったわけでもありません。
ホテルの部屋で、余っていた缶コーヒーと牛乳を混ぜただけです(笑)
それでも、大島牛乳のまろやかさが加わり、なかなかおいしいカフェオレになりました。
牛乳の味をしっかり楽しみたいなら、そのまま飲むのが一番。
少し余った場合は、コーヒーへ加えたり、朝食のシリアルへ使ったりしてもよさそうです。
大島牛乳は島内限定販売なの?
訪問当時は、基本的に伊豆大島の島内で購入する商品という印象でした。
現在も主な販売場所は、島内の商店、スーパー、土産店です。
農産物直売所の「ぶらっとハウス」では、大島牛乳のほか、大島バター、牛乳煎餅なども取り扱っています。
また、株式会社大島牛乳では200mlと1,000mlの牛乳、大島バター、大島牛乳アイスなどを製造・販売しています。
ただし、現在は完全な島内限定というわけではありません。
東海汽船の公式オンラインショップ「島ぽち」では、大島牛乳1,000mlのセットが販売されることがあります。
生産量や在庫、配送条件によって売り切れる場合があるため、購入画面で最新状況を確認してください。
島内のどこで買える?
大島牛乳や関連商品は、次のような場所で購入できます。
・島内のスーパーや商店
・港周辺の土産店
・農産物直売所「ぶらっとハウス」
・株式会社大島牛乳の販売所
・大島牛乳を扱うカフェや飲食店
牛乳は生鮮品なので、店舗や時間帯によっては売り切れている可能性があります。
確実に購入したい場合は、見つけた時点で買っておくのがおすすめです。
「帰りの港で買えばいいや」
と思っていると、その日の入港地が変更になったり、売店で売り切れていたりするかもしれません。
持ち帰る場合は保冷に注意
大島牛乳は要冷蔵の商品です。
島内ですぐ飲む場合は問題ありませんが、本土まで持ち帰るなら保冷バッグと保冷剤を用意しましょう。
特に夏場は、高温の車内や屋外へ長時間放置しないことが大切です。
船の乗船時間だけでなく、港での待ち時間や自宅までの移動時間も考える必要があります。
牛乳をお土産にした結果、帰宅時にはヨーグルトのようになっていた……では笑えません。
大島牛乳を使った関連商品もおすすめ
伊豆大島では、大島牛乳を使ったさまざまな商品を楽しめます。
・大島バター
・大島牛乳アイス
・牛乳煎餅
・パンや食パン
・プリンやパンナコッタ
・カフェラテやクリームソーダ
大島バターは、大島牛乳と島の塩を使って手作りされる希少な商品。
生産量が限られているため、島内でも常に購入できるとは限りません。
見つけた場合は、少々値段が高くても買っておいたほうがよいかもしれません。
あとで欲しくなっても、次に伊豆大島へ行くまで手に入らない可能性があります。
「牛乳」「加工乳」「乳飲料」の違い
ところで、スーパーの牛乳売り場には、見た目がよく似た商品がたくさん並んでいます。
パックへ大きく「ミルク」と書かれていても、法律上の種類がすべて同じとは限りません。
違いを知りたいときは、パッケージにある「種類別名称」を確認してみてください。
牛乳
種類別名称が「牛乳」の商品は、生乳だけを原料として作られています。
水や乳製品、栄養成分などを加えることはできません。
成分を調整せずに殺菌し、容器へ詰めた物です。
成分調整牛乳
生乳から水分、乳脂肪分、ミネラルなどの一部を取り除き、成分を調整した物です。
原材料は生乳のみなので、これも「牛乳」と名の付く種類に含まれます。
低脂肪牛乳・無脂肪牛乳
生乳から乳脂肪分の一部または大部分を取り除いた物です。
低脂肪牛乳や無脂肪牛乳も、原材料は生乳のみ。
したがって、単に「純粋な牛乳ではない」と考えるのは正確ではありません。
脂肪分を控えたい方には、目的に合った選択肢です。
加工乳
生乳や牛乳へ、脱脂粉乳、クリーム、バターなどの乳製品を加えて成分を調整した物です。
濃厚な味に仕上げた商品や、脂肪分を抑えた商品などがあります。
乳飲料
生乳や乳製品を主原料とし、カルシウム、鉄、ビタミン、コーヒー、果汁などを加えた飲み物です。
コーヒー牛乳やフルーツ牛乳の多くも、種類別名称では乳飲料に分類されます。
安い商品が悪いわけではない
以前の私は、
「安い物を選ぶと、本当の牛乳ではないかもしれない」
と考えていました。
しかし、加工乳や乳飲料、低脂肪牛乳が牛乳より劣っているという意味ではありません。
それぞれ原材料、味、脂肪分、栄養成分、価格が異なる商品です。
濃厚な牛乳を飲みたいのか。
脂肪分を控えたいのか。
カルシウムや鉄分を補いたいのか。
コーヒー味や果物味を楽しみたいのか。
目的に合わせて選ぶのが一番です。
生乳だけで作られた通常の牛乳を飲みたい場合は、種類別名称に「牛乳」と書かれている商品を選びましょう。
2026年版・株式会社大島牛乳の基本情報
会社名:株式会社大島牛乳
住所:東京都大島町岡田字新開87-1
電話番号:04992-2-9290
営業時間:8:30~16:00
祝日の営業時間:8:30~10:00
定休日:日曜日
主な商品:大島牛乳200ml・1,000ml、大島バター、大島牛乳アイス
主な購入場所:島内の商店、スーパー、土産店、ぶらっとハウスなど
オンライン販売:東海汽船公式通販「島ぽち」で取り扱いあり
営業時間や商品在庫、販売場所は変更される場合があります。
工場や販売所へ直接訪れる場合は、事前に電話で営業状況を確認すると安心です。
まとめ|復活の歴史を知るとさらにおいしい大島牛乳
かつて「ホルスタイン島」と呼ばれるほど酪農が盛んだった伊豆大島。
その島で長く愛されてきた大島牛乳は、工場閉鎖によって一度市場から姿を消しました。
しかし、島の酪農を残したいと願った人々が立ち上がり、再び店頭へ並ぶまでに復活。
現在は学校給食にも使われ、牛乳煎餅やアイス、大島バターなど、島のさまざまな商品を支えています。
実際に飲んでみると、自然な甘みがあり、濃厚ながら後味はすっきり。
もちろん、何も知らずに飲んでもおいしい牛乳です。
しかし、一度消えた島の味を復活させた人々の物語を知ってから飲むと、より特別に感じられます。
伊豆大島を訪れたら、三原山や裏砂漠を巡るだけでなく、大島牛乳もぜひ味わってみてください。
そして、レンタカーにドリンクホルダーがなかった場合は、ホテルまで大切に持ち帰りましょう。
余っている缶コーヒーがあれば、即席の大島カフェオレまで楽しめます(笑)

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